ハシバミといえばセイヨウハシバミ(ヘーゼルナッツ)がお菓子の材料としてよく知られていますが、このセイヨウハシバミと同類のハシバミ類が日本国内でも昔から自生しています。
日本国原産のハシバミ類は、ハシバミ(榛)とツノハシバミ、ムラサキハシバミです。
これらのハシバミについて、栽培の歴史や利用方法(食べ方)などを調べてみました。
早速見ていきましょう。
国産ハシバミ(ツノハシバミとヘーゼル)は栽培されていたのか?
国内に自生しているハシバミやツノハシバミなどが現在も栽培されているというのは、聞いたことがないです。
昔はどうだったのか?
過去の文献を見てみると、
- 『本草和名』(平安時代の918年に編纂された日本最古の薬物辞典)には、「榛子」、「波之波美」という記述がみられる。
- 『延喜式』(平安時代中期に編纂された宮中の行事や制度などをまとめたルールブック)には、「榛」という記述がみられる。
古文書には、榛の記述はあるものの、積極的に栽培していた記録はないようです。
おそらく旧石器、縄文時代から秋に山で採集できる木の実の1つとして食べられていたのだろうと思われます。
明治以降のハシバミ(ヘーゼル)の栽培の歴史は?
明治時代の「新宿試験場植物園」(明治9年)や「三田育種場舶来果樹要覧」には、「榛(はしばみ)」の記述があり、試験的に栽培をしていたことがわかります。
昭和に入ると田中長三郎博士が(旧)ソビエト(現ロシア)から10個ほどのバルセロナ種子を持ち帰り、台北帝大で栽培して、実をならせるところまで育てることに成功しています。
そのバルセロナ種のヘーゼルの実は、田中諭一郎博士が日本に持ち帰ってさらに選抜して、高砂(田中1号)、宝珠(田中2号)と命名してしています。
昭和29年には、当時長野県副知事だった田中勝治氏がアメリカ・カリフォルニア州のナーザリーからバルセロナ種とダッチリー種を持ち帰って、長野県須坂市にある長野県園芸試験場で栽培して、昭和36年には実をならせることに成功しています。
長野県園芸試験場の栽培結果を得て、県内(上高井郡高山村駒場、松本市大字寿小赤、牟礼村三本松)で試験栽培が始まることになります。
時を同じくして、長野県の小布施町でもアメリカのヘーゼルや、田中1号、2号を試験栽培するところがでてきています。
このように長野県では、昭和30年代から40年代にかけて外来種のハシバミ(ヘーゼル)が試験栽培されて、本格的な商業栽培への意欲が高まったようです。
しかしながら、森永製菓などへの販路を開拓しようとしたようですが、取引価格が安すぎて栽培は衰退していった歴史があります。
そこから再度長野県で外来種のセイヨウハシバミ(ヘーゼルナッツ)が栽培され出すのは、平成に入ってからです。
※セイヨウハシバミ(ヘーゼルナッツ)の国内栽培については、こちらの記事をどうぞ!
国内原産のハシバミやツノハシバミはどのように利用されていたのか?
国内原産のハシバミやツノハシバミは、現在まで野生のままで栽培されてきませんでしたが、秋の山の恵みとして、積極的に採集されて食べられていたようです。
ハシバミやツノハシバミがどのように利用・食べられていたのか民俗学的な調査があまりおこなわれていないようで資料がほとんど見つけられていませんが、そんな中でも長野県軽井沢在住の老人に子供の頃の生活を聞き取り調査をした資料を見つけました。
その資料は、軽井沢サクラソウ会議というサクラソウ保存と再生活動をしている団体がまとめた本で『もう一度みたい!軽井沢の草原・湿原』(2005年)という本です。
この本の中に軽井沢に自生しているハシバミ、ツノハシバミについて積極的に採集して食べていたという記録があります。
その記録によると、当時のハシバミの食べ方の一端が垣間見れます。
- 味は、良く。みんな大好物だった。
- 大きなふろしきを持って取りに行った。
- まだ木になっている実をもぎ取って持ち帰った。
- 歯で噛んで割り、中の白い実をポリポリ食べた。
- たくさん採って、干しておいて冬になると石で割って食べた。
- 蒸してから干して食べることもあった。
この記録をみると、そのまま乾燥させたり、蒸してから乾燥させて保存して、冬場の食料にしたりしていたようです。
基本的には料理をすることもなく殻を割ってそのまま食べるというのが一般的だったようです。
個人的には、くるみのようにすり潰してペースト状にしたりして食べたりしていなかったのかも気になるところです。
ハシバミやツノハシバミは全国的に広範囲で自生しているのでほかにも食べ方がるのではないかと思っています。
もし、何か資料や情報をお持ちの方がいらっしゃれば当ブログまでお知らせください。
事例をどんどん追加していきたいと思います。
※ハシバミ関連の記事はこちらもありますのでよろしければ御覧ください!
コメント
ツノハシバミは細かい棘が痛い為、手袋などを持ち歩かない子供は積極的に取りに行きません。
自生数も少なく、結実数も少ないので専用の収穫で山に入る事も少ないです。
味は悪くないのですが…
(新潟の山育ちの感想)
貴重な実体験のコメントをお寄せいただきありがとうございます。
新潟では、ツノハシバミをどのように食べていたのかもご教示しただけると嬉しいです。
よろしくお願いたします。